- 作者:八田 秀雄
- 出版社/メーカー: 大修館書店
- 発売日: 2011/12/01
- メディア: 単行本
乳酸に関する知見が、学術的に網羅的に語られていた。
一般的に、乳酸="蓄積したら体が動かなくなるもの"、乳酸="悪"として認識されていることが多いと思う。 従来はそのような認識で研究や運動が行われていたが、この本の著者八田先生は、最新の研究の成果として乳酸は悪ではなく、むしろ体を動かすエネルギーにできる、として理論を展開している。
上記の理論は読めば納得できる。
さらにこの本では特に、八田先生が日本陸連の科学委員でもあることから、いかにして乳酸を活かしてランニングをするか、ということにフォーカスしている。
この本の中では、ランニングを短距離からマラソンまでに分類しており、さらにマラソンはプロレベルのマラソンと、市民ランナーのマラソンでも分類して章分けされている。
どの距離においても乳酸は発生するものであるが、発生した乳酸を再度体を動かすエネルギーとしてエネルギー回路を回す、という考えが根本にある。マラソンでは特に顕著で、解糖系で糖が分解してエネルギーと乳酸が生成し、糖が少なくなってくる後半に、乳酸を使ってエネルギーを賄う必要が出てくる話は、非常に面白かった。 この考え方は、競技本番だけでなく、よりシビアな強度で長時間実施する練習中の考えにも応用でき、高いパフォーマンスを保って強化をすることができると感じた。
本の章立て上、スプリント種目から中距離、長距離、マラソンと様々な特性に分けられて構成されている。そのため、この本はランニングに限らずどのスポーツにも応用できる可能性を考えることができた。
乳酸が何かという、今現在の知識をいったん忘れて、まっさらな状態でぜひ読んでほしい本であった。
おすすめ度
★★★★★